彼女と二度あったのは
それから約一ヶ月後のお花見会だった
俺がふるさと納税の返礼品でもらった日本酒を
ちびちびと飲むその姿は
ここに警察が通りかかったら100パーセントアウトだったが
不思議と絵になるものだった
あ!あらどうしたのかしら伊月くん
そんなにまじまじと見つめて
おいえ こんなに可愛いのに
本当に成人なんだなって
かわいいて
大人をからかうものではないわ
そういう彼女の頬は酒のせいかほのかに赤かった
う~ざーて!
そろそろお開きの時間が
今日は楽しかったは
誘ってくれてありがとう
お兄ちゃん
か からかわないでください
メモもっと言ってください
嫌よう
来年の桜も
こうしてみんなで見られるといいわね
彼女は桜を見上げ切なげに呟いた
俺はその心ぼそそうな横顔に
彼女の本当の姿を見た気がした
大丈夫ですよかにこ春斗は売れ子だし
俺だって今回の新刊は超傑作だし
こんな作品が書けるんだから俺の将来は安泰に決まってますよ
期待しているは 羽島伊月君
そういえば、あなたは
幽に将来を見込まれていたのだったわね
幽って関ヶ原幽先生のことですか?
え
関ヶ原幽 それは俺の作家を志すきっかけになった小説家の名前だった
もう少しでアシュリーさん関ヶ原先生と知り合いだったんですか?
え 親友だったは 私の一番大切な
そうだったんですか?
関ヶ原先生は二年前に若くして亡くなった
俺の胸に あの時の悲しみが蘇る
羽島伊月君
いなくなってしまった人たちの分まで
あなたは幸せになるのよ
彼女が初めて見せた切なくも優しい微笑みに
俺は心臓を撃ち抜かれたような衝撃を覚えたのだった