古代幻想神話諏訪大戦・破
雨 体に染みて 重くなる私の体
でもその背中 あの面影を 見れると信じてた
泥にまみれた両足で 藻掻きながら貴方の名を叫ぶ
雨音が声を遮る 天は私の手を離れていく
蛙は今溺れかけて 泥中に沈む一項前
長い手足に救われた 今は人に堕ちているだけだ
骸を見つけるたびに 感情が入り混じってく
震えた足と 荒れた呼吸が 未来を拒んでる
暗い森を裸足で歩く 石につまずき転ばぬように
探し回る果てに見つけた 安らかに眠るその姿を
熱のない身を揺すっても 貴方の返事はなくて
差し込む日は 貴方を照らす 私はまだ雨に溺れてるのに
統計の裏にあった ミクロな視点のドラマ
それを知った未亡人には 神を語る資格など無いだろう
最愛の人の死に立ち会った少女に、近づく足音。彼女がその方向を見上げると、そこには
注連縄を背負った女性が……
「おや、奥さん。なんてところに来ているんだ。ここは血で血を洗う戦場だぞ?」
「そんなの……わかってる。けど……!」
「おまえの気持ちだってわかるさ。戦争で家庭の幸せを壊されるなんて、理不尽にも程があ
る」
「ええ。そうね。ああ……」
「後悔しているのか?」
「……そうかも知れないわ」
「なら、さっさと国を明け渡すんだな。民のためにも、そして何より腹の中の赤子のために
も」
「私の素性を知っているのね。……なら」
「今、殺せばいいじゃないって? 早く逃げな。生憎旦那の死に悲しむ妊婦を殺すなんての
は、趣味に合わんものでな」
背を見せ彼女は遠ざかっていく 振り向くことなく
今私は許されたのだ 情けをかけるほどの“ヒト”として
私を生かしておくことさえ 彼女エゴの内
嗚呼これを負けというのか 聞くにもその背中は届かない
戻らない 幸せを振り切って
貴方の顔に最後の口づけを
ありがとう 別れの言葉を告げて
涙の味を一人飲みこんだ