死への境界を 一人見ていた
貴女がその上に居たからさ
恋をしていた あの日と同じ 思いを言えぬまま
待ち合わせてから貴女は
どこか様子がおかしかった
「どうしたの」って聞いてみても
「なんでも無いよ」と言うわかりやすい嘘
月と雨が 混ざった夜に 貴女は急に姿を消した
見知らぬ土地で どこへ行くのか
常世と現し世の境界を 踏み越える気なのか
夜に飛び出して 貴女を探した 今にも傾きそうな秤見て
雨と汗さえも ぐちゃぐちゃになって ようやく 貴女を見つける
崖をただ眺めてた
言葉を詰まらせる貴女 その背中には タナトスが舞い降りてて
嘘だと 言って欲しかった それでも傾く天秤はもう誰にも止められない
「ごめん」と呟く 貴女は今にも
泣き出して しまいそうな顔をしていた
けれど一言も 教えてくれない 自ら命を断つ理由
何度 どう聞いたって
「最期にお願い」 貴女は切り出す
「私のことはどうか忘れて」
「今までありがとう。さようなら」と言い
天秤の針は向こう側へと 傾いて振り切れた
差し出す右手を あなたは無視して 奈落へ身を預けて沈んで行く
無力な私は 崖底へ落ちる 貴女の最期を見ていた
奇跡を信じて 貴女を探した 何度も涙と雨に溺れても
枯れたこの声で 何度も叫んだ けれども貴女はいないと
妖かしが囁くの