むかし、むかし、
あるところに、
猿と蟹がありました。
ある日猿と蟹はお天気がいいので、
連れだって遊びに出ました。
その途中、
山道で猿は柿の種を拾いました。
またしばらく行くと、
川のそばで蟹はお結びを拾いました。
蟹は、「こんないいものを拾った。」と言って猿に見せますと、
猿も、「私だってこんないいものを拾った。」と言って、
柿の種を見せました。
けれど猿はほんとうはお結びがほしくってならないものですから、
蟹に向かって、「どうだ、この柿の種と取りかえっこをしないか。」と言いました。
「でもお結びの方が大きいじゃないか。」と蟹は言いました。
「でも柿の種は、蒔けば芽が出て木になって、おいしい実がなるよ。」と猿は言いました。
そう言われると、蟹も種がほしくなって、
「それもそうだなあ。」と言いながら、
とうとう大きなお結びと、小さな柿の種とを取りかえてしまいました。
猿はうまく蟹を騙してお結びをもらうと、
見せびらかしながらうまそうにむしゃむしゃ食べて、
「さようなら、かにさん、ごちそうさま。」と言って、
のそのそ自分のうちへ帰っていきました。