夏目:極有り触れたなんでもない今の生活を、未来の自分に伝えるとしたら、俺は一体なんと言えばいいのだろうか。
夏目:これが…
北本:タイムカプセルか?
笹田:何よ、夏目くんも、北本くんも微妙な反応ね、もっと喜びなさいよ。
西村:笹田、これテニスボールより小さいけど、皆の分入るのか?
笹田:ん~確かに、ちょっと小さいけど、密閉性の高いきちんとしたタイムカプセルって、草々手に入らないのよ。丁寧に扱ってねぇ、西村くん。
西村:はい~
笹田:ん~とにかく、せっかくのタイムカプセルなんだから、皆には一人一、未来の自分へ手紙を書いてもらおうと思ってるの。一週間後に回収するから、ちゃんと書いてねぇ。
北本:あ?
西村:未来の自分?そんな恥ずかしいの俺絶対書かないぞ。
笹田:埋める場所の許可も、もう通ったあるんだから、しっかり書きなさい。委員長命令よ。
西村:でたない委員長命令。
夏目:笹田は、なんて書く?
笹田:私?私はいろいろあるわよ。だって、将来有望な乙女ですから。
北本:なぁ、西村は?
笹田:え、する~
西村:え?俺は、ん~調子はどうですかとか?
北本:普通だな。
西村:あ、いいんだよ。北本こそ、何書くんだ?
北本:俺?ん~未来の俺は、今の俺が作るんだから。俺は、今の俺を書くよ。
西村:なんだよ、難しいこと言うなよ~夏目は?
夏目:あ~俺は…
田沼:よぉ!
夏目:あ!田沼。
田沼:へぇ、楽しそうだな。あ!タイムカプセルか?
笹田:あ!やっといい反応、ねぇ、いいでしょう!楽しそうでしょう。田沼くんも書いてみる?
田沼:そうだな、あ、これ、手紙って一人何枚まで入れていいんだ?
笹田:え?何枚って、どれだけ書くつもりなの?
田沼:だって、忘れたくないことって、一杯あるだろう。
笹田:ん、そりゃあ、そうだけど…ん~ねぇ、夏目くんは、どれくらい…
多軌:笹田さん、笹田さん
笹田:出た~
西村:五組の多軌さんだ~
多軌:ねぇ、手紙以外の物は、絶対だめ?
笹田:ん?何…入れたいの?
多軌:このあたりの魅惑の猫ちゃん溜まり場マップ。
笹田:魅惑?まあ、地図なら、手紙の裏にでも書いておけば。
多軌:あ~そっか。なんで気付かなかったんだろう。笹田さん、ナイスアイデア。夏目くんちの猫ちゃんももちろん書いて置くからね。
夏目:あ~ありがとう。ニャンコ先生喜ぶよ、多分。
多軌:ねぇ、夏目くんはなんて書くの?
夏目:まだ、考え中…かな。
多軌:あ、そっか、まだ時間あるものねぇ。
夏目:ん、そうだね。
北本:なぁ、皆、続きは明日にして、そろそろ帰ろうぜ。
田沼:そうだな、夏目、出ようぜ。
夏目:あ!
西村:未来への手紙ねぇ~う~恥ずかしい、う~恥ずかしい~
夏目:考えたこともなかった、未来の自分のことなんて。小さい頃から、変な物を見た、気味悪がられて、盥回しになった。家族なんていらない、早く大人になりたい、そう思ってはいたけれど、それがどんな大人なのか、どんな未来なのか、そんなことを考える余裕はなかった。ただ、不安定の日々を抜け出したくて、毎日必死で。
夏目:未来の自分…か?
夏目:帰ってきてからずっと、何を書こうか考えていた。考えているうち、怖くなった、迷惑をかけたくない、それ以上に失いたくない、守りたい、そう思う物が出来たからなのか?
ちょび:恋文…でございますか?
夏目:あ!ちょび、あっ、違うよ、って言うか、また勝手に入ってきて、って、ミスズ、ヒノエ、それと中級。
ミスズ:恋文に現を抜かすなど笑止、それより、後世へ残すよ歴史絵巻の執筆はどうなされた?
夏目:歴史絵巻?
中級A:夏目様、これでいよいよ未来永劫夏目様伝説が語りつがれるのですねぇ~酒が進みますな。
中級B:レジェンド、レジェンド
夏目:誰がそんなの書くって。あ!おい、先生、どう言う事だ?
ニャンコ先生:え?なんだ?なんだまったく、ぴりぴりしやがって。私は何もしておらんぞ。
夏目:それはそれで問題だな。
ヒノエ:私たちは好きで集まっただけだ。その猫達磨のせいではないよ。
夏目:ヒノエ?
ヒノエ:さぁ、私のことを書き残すがいい。艶やかで美しいあやかしだと。
ちょび:ではではでは、、私は大物あやかしの欄にでも加えて欲しいのであります。
ニャンコ先生:へぇ、へぇ、顔のサイズだけ大物なのだなぁ。
ニャンコとちょび:へぇ、へぇ、へぇ、へぇ、へぇ…
ちょび:では、この猫目はちんけ目酔いどれ中年カプー、プー族あったり推薦するのであります。
ニャンコ先生:中年?ぷー?…
夏目:それじゃ妖怪図鑑だから。はぁ~だめだ。そもそも何を書けばいいんだ。手紙全然かける気がしない。
塔子:貴志くん~
夏目:はい!如何したんですか?
塔子:あ、ごめんなさいね、ちょっと今手が離せなくって、悪いけど、お使いに行ってもらえないかしら。
夏目:いいですよ。何を買ってきたらいいですか?
塔子:ケチャップ、お願いできる?余ったお金でおやつ買っていいから。
夏目:ふん、はい!
夏目:ケチャップ、スーパーでいいよな。おぅ!
名取:やぁー夏目。
夏目:名取さん。
名取:近くに来たから、一目、会いたくねぇ。
夏目:あ~あ、すいません。俺今からちょっとお使いに行くんです。
名取:そうか?乗るかい?
夏目:いいえ、近いので、歩きます。
名取:じゃ、私も運動不足だし、ちょっと歩こうかな、一緒に。
夏目:いいですけど?
名取:車をどこに止めようかっと、ん?浮かない顔だね。
夏目:いいえ、別に。
名取:ん?そうだ、夏目、やっぱり車でちょっとだけ付き合わないか。お使いの邪魔はしないから。
夏目:はい。
名取:なるほど、タイムカプセルねぇ。
夏目:名取さんなら、何を書きますか?
名取:ん?
夏目:いいえ。
名取:今日はちょっと買いたい物があったんだ。
夏目:何ですか?
名取:すぐ着くよ。別に何でもない普通のお店なんだけど、あ!ここだ。
夏目:文房具屋さん?よく来るんですか?
僕簡単な術に使う、ちょっとした半紙ぐらいなら、ここでも買うかな。まぁ、今日はそう言った物じゃないんだ。
夏目:あ、すごい、レターセットがたくさん、それと、駄菓子も。
名取:そう、ここすごく種類が多いんだ、見ているだけでけっこう楽しんだよ。
夏目:それにしても、如何して?あ、ファンレターの返事ですか?
名取:正解。あ、これなんかいいな。唐草模様、ん、しぶ過ぎるかな。あ、こっちの方がいいな。はぁ、うゎ、夏目、これなんてどうかな?
夏目:へぇへぇ、あ?ん?
名取:何か面白いのあった?
夏目:いや、いろんな種類があるんですね、楽しいです。
名取:そう?
名取:夏目、はい、これ!さっき見てたよね。
夏目:ん?あ!
名取:にゃんこ柄レターセット、あんまり君の猫ちゃんにそっくりだったから、見た時笑っちゃったよ。あ、でも君の猫ちゃんの方がもう少しむちむちしてるかな。
夏目:え、へぇへぇへぇ、そうかもしれないです。
名取:上げるよ、それ。
夏目:え?あ、ありがとうございます。
名取:少しは、楽しいだろう。
夏目:え?おぅ
名取:手紙の事だけど…
夏目:おん、はい!
名取:先が分からないのは、誰でも同じ、あまり気にしないで、素直に書けばいいんじゃないかな。
夏目:名取さん
名取:タイムカプセルを開けた時、未来の夏目がこのレターセットを見て、私のことを思い出すなんて、へぇ、わくわくするね~
夏目:名取さん。
夏目:塔子さん、ケチャップこれで良かったですか?
塔子:あ~そうそう、これこれ。ばっちりよ、貴志くん、ありがとう。
夏目:それと、これ、おやつ、皆で。
塔子:あらあら、何?あら!駄菓子、懐かしいわね、こんなに。
夏目:はい。
塔子:滋さんも好きなのよ、こう言うの。ご飯の後に開けましょうね。ちなみに今晩は煮込みハンバーグなの。
夏目:楽しみです。
塔子:ふんふん、待っててね。