夏目:ただいま!あ!あいつら、酒飲み散らかして帰って。もう、ニャンコ先生、寝てないで片付け手伝え!まったく、ん?なんだこの着物?誰かの忘れものか?
??:ん!寒い~
夏目:っけ!着物の下から、妖怪!
??:うん~誰だもう?引っ張るなよ。うん~う~
夏目:先生、なんか、変な妖怪が寝てるぞ、起きてくれ!
ニャンコ先生:あ~うん~
夏目:起きろう!
ニャンコ先生:うぉ!こう~こっこ~
??:どぉ~なんだ?喧嘩か?喧嘩両成敗。うぁ~喧嘩は良くない、謝っちゃいけない。
ニャンコ先生:謝ったのはお前だ、いきなり何だ無礼なやつめ。
??:あら、間違えた。
夏目:君はいったい…どうして?
??:あ~玲子!
夏目:え?
??:僕です!ツヅレです。
夏目:あ!悪い、俺は玲子さんじゃない、孫の貴志だ。
ツヅレ:孫?
ニャンコ先生:玲子は疾うに他界した
ツヅレ:そんな…本当に?本当に別人?しかし匂いは確かに同じ、それなのに違うだなんって、そんな…あ~では、僕の名前は、如何しよう、どっどっ如何したら、如何したら、どうなるのですか?え!そんな、せっかく、如何して、え、如何したら~
ニャンコ先生:でも、惜しかった~
ツヅレ:あ!
夏目:友人帳に名前があるのか?
ツヅレ:あっ!はい!えっ、その、恥ずかしながら、名前を取られたおかげで命拾いしたのも言えるのですが…
夏目:如何言うことだ?
ツヅレ:昔、僕は、そりゃあはもう、うじうじした奴でした、うじうじしていることを気にやみ、ますますうじうじしてしまい、仲間のあやかしすら、自ら遠ざけて、孤立していました。やがて、日々を過ごすのに疲れた僕はこの帯で首を括り、いっそう死んでしまおうかっと思った事もあったほど。
夏目:え?
ツヅレ:そんな時出会ったのが玲子だったのです。弱っていた私はあれよあれよと名前を取られ、あ、いや、預けさせていただいたっと言った方が正しいのかもしれません。
ニャンコ先生:そりゃあ、ていよく子分にさせられたなぁ。
ツヅレ:僕、もうあんな真似しません、誓ってもいい。だから、どうか、名を返していただきたい。
ニャンコ先生:本当に大丈夫なんだろうな。
ツヅレ:大丈夫です。だって、毎日こんなに楽しいのですから。
夏目:あ?
ツヅレ:決してご迷惑になるような真似はいたしません、玲子に頼らずとも、自分のことぐらいは自分でどうにかできるようになったのです。だから…
ニャンコ先生:ふん~だとさ、夏目。
夏目:分かった、長いこと名を縛ってしまい、済まなかったね。
夏目:我を護りしものよ、その名を示せ。ツヅレ、名を返そう、受けてくれ。
ツヅレ:あ~
夏目:流れ込んでくる、ツヅレの記憶。
ツヅレ:あ~また誰かが僕を嘲笑ってる。
玲子:違う、あれは人の子よ、あなたのことを笑ったんじゃない。
ツヅレ:でも、どうせ。
玲子:あなたも笑って御覧なさいよ。
ツヅレ:え?あやかしが笑うなんて、気味が悪いよ。
玲子:ほら、にーって
ツヅレ:えっ、あ、に…にー
玲子:うぇ、うへぇへぇ、ツヅレ、こっちが靨(えくぼ)があるのね、知ってた。
ツヅレ:え?なんだよ、玲子は、おっお前、如何したんだ?口元に血が、もしや、さっきの人の子にやられたのか?
玲子:違う。
ツヅレ:玲子、僕と一緒にいたから。あ!よく見れば、これは血ではないな。なんだ?飴か?
玲子:あ?さっきりんご飴食べたから。
ツヅレ:ふん~
玲子:笑ったね。人を笑っちゃいけないのよ。
ツヅレ:やぁ、拗ねるな、はっ、くすぐったい、はぁ
玲子:えぃ!
ツヅレ:はは~
玲子:してやるんだから、はぁ~
ツヅレ:後日、あやかしの間で玲子さんと言うと恐ろしく、強く、美しい人の子だっと知り。あ!あの人がそうだったのかっと、妙に納得いたしまして。そう、吹っ切れたとでも言うのですかね。とにかく、玲子は、とても楽しそうに笑っていました。
夏目:そうか。
ツヅレ:へぇ、最近、僕はあの頃いったい何をうじうじ悩んでいたのか、もはや、思い出せないほどで、今こうして、何事もなく、元気いっぱいなのは、玲子のおかげなのです。
ニャンコ先生:お前、幸せ者だな。
ツヅレ:はい!
夏目:あ、はぁ。
ツヅレ:なんて、あ、本当は、玲子がなんだか悩んでいると言う噂を聞きまして、名前奪還ついでに冷やかしてやろうと思ってきたんですがね。まさか、ねぇ、そんな、うっうっあぅ~、うん~亡くなってしまっててなんて、あぁ、あぁ、うんん~
夏目:あ、励ましに来てくれて、ありがとう。
ツヅレ:うんん、いいんです、いいんですよ。ふぅん~泣いてないですから、ねぇ、本当に。えっ、じゃ、僕、帰りますね。
夏目:そうか、元気で。
ツヅレ:へぇ、夏目もお元気で、また、いつか…
ニャンコ先生:玲子め、変な奴の名ばっかり集めやがって、なぁ~あ?夏目、如何した?大丈夫か?
夏目:あ~名を返して、少し疲れただけで、はぁ、大丈夫。
ニャンコ先生:あ!
夏目:そうだ、俺タイムカプセルに入れる手紙書くんだった。
ニャンコ先生:おい、そう言えば、そんなこと言ってたな。
夏目:けど、その前にこの部屋片付けなきゃだめだな。
ニャンコ先生:まったく、誰だこんなに汚したのは、怪しからん、私ではないぞ、私では。
夏目:名を返してやると、妖怪は皆いい顔になる。返してやれて良かったなっと思う反面、不意に、寂しいと思ってしまうのは、俺のエゴだろうか?この先どれぐらい別れを経験するのだろうか。
ニャンコ先生:なんだこの汚い帯は、私の座布団が汚れてしまうではないか?
夏目:あ、それ、もしかしてツヅレのじゃないか?
ニャンコ先生:ん!捨てるぞこの物。
夏目:あ~取りに来るかもしれないだろう。
ニャンコ先生:好きにしろう。
塔子:貴志くん、ご飯、出来たわよ。
夏目:はい!
ニャンコ先生:うぃ、うぃ、うぃ~
塔子:どう?
滋:ん~旨い!
塔子:今日ね、これ作ってる途中でケチャップがないことに気が付いてね。
滋:おや、じゃあ、如何したんだい?
塔子:貴志くんに買って来てもらったの、ねぇ。
滋:はぁ、はぁ、そうか。大変だったね。
夏目:そんなことないです。
塔子:そうしたら、貴志くん、とっても買い物上手で、おやつはね、こんなに買ってきてくれて。
ニャンコ先生:うっふん~
塔子:あら、ニャンきちくん、もうお代り?
ニャンコ先生:うん、うん~
夏目:ご飯を食べたら、ニャンコ柄のレターセットに、少しだけ書いて見ようと思った、未来の自分に、今の自分のこと。