人の音せぬ東京で 神は誰ぞとたずぬれば
神も昔は人なりき 我もついには神なりき
花の東京ふり捨てて 眉目よき女と安月給
楽しみふけるはおぼろげか 後生我が身をいかにせん
はたとせ娑婆にやどりして サンスターで歯を磨き
ふつつならぬとあわれな神を ハチ公前で今日も待つ
病はあまたあんなれど 生まれ出て来たもの好きは
死してもなおらぬ病なり 誰を呪いてよろばいゆかんか
積もれる罪はさしおいて 慈悲の光の東京で
食って眠って何をして とどのつまりは黙って死にませ
我等が時代の目出たきに この世に生まれたばちあたり
身をかえ再びばちあたり 空にはオリオンよばい星
渋谷にひとり寝起きして おもえば涙ぞおさええん
はかなきこの世の快楽を 知らざりけるこそ日本あわれ
黄金バットは舟筏 太平洋にぞ浮かべたる
我等が心の愚かにて 乗せて渡さん東京ねはん
金いろ、金いろ、金いろ……
あ、あ、あ……