処刑場が地面の下から見えた
実にそこは上下左右も無かった
身を任せ、ただ沈んで行く
冥途の旅支度、八百里を歩く
死手の山の麓には
曼珠沙華と曼荼羅華の
それは美しいお花畑
賽の河原まるで俵積まれた
石の側で崩れ去って踏まれた
塔を建てる、更から
一重積んで父の為
二重積んで母の為
三重で西を向き
樒ほどなる手を合わせ
逢瀬からの十月十日経って受けた生が
**放れ見せる仕種
父母が恋し握る小石
手足擦れてただれ
一つ、二つ、三つ、四つ
指先より出づる、血の滴が功徳
もののあはれ、世は無常なり
自業自得、因果応報は避けて通れぬ道理
鏡照る日眼、鉄の杖と鞭を持って
獄の鬼が塔を打ち散らす、一つ残らず
三途の川、此岸から彼岸花 見渡せば霧の先は、千里の幅
罪の浅き者は 膝が浸かる山水瀬
舟の渡し賃は 袖に縫った六文銭
罪深き者は 取って置きの江深淵
信念試される激流は、矢の如く速く
波は山頂のように高く
川上より巌石、五体を打ち砕く
死後の世界、死ぬことさえ許されず
耐えて幾度生き返っても、苦難は絶えず
水底に沈めば大蛇が口を開け
水面に浮き上がれば夜叉の弓が待ち受け
川の畔**場、衣服剥ぐ奪衣婆
翁が衣領樹の木の枝にかけて量れば
罪の重さ決める渡り裸一貫
未だこれで序の口、七日七晩
対岸に辿り着きし亡者、
十王の御前に立ち、太鼓判か盥廻し
第五番の閻魔王庁含み、
七日毎にある、七回の業の裁き
水晶の浄玻璃を始め八枚の鏡
法廷で生前の行為に鑑み
檀荼幢、閻魔帳を照らし合わせ
ここで嘘がバレた者は舌をひっこ抜かれ
六道の判決を前に慚愧と懺悔
裁判長の尋問が庭に轟いた
「なぜ、これほどの長い罪状を犯したの か、言いたい事はあるか」
亡者はこう答えた
「言う事はありませぬ、もう来し方から は逃れとうございます」と淚
閻魔羅闍「嘘はなくとも悔い改めておら んとは、焦熱地獄を命ず」
嗚呼、閻魔様様様
庄之助は寺の縁側で
汗まみれで目覚めた
ああ、こんな夢は嫌だ、嫌だ
逆夢であって欲しいものだ
もっと良い夢が見たいと
再び転寝を始めた