○(重苦しく不穏な曲想⼀⼀怪⼈の居城。舞台は暗く保つ。六⼈の⼥性と怪⼈が⽴つ)
(怪⼈、⼤きく⼿を広げて、不敵に告げる)
怪⼈「さあ、君たちを、祝福しよう。その美しい姿 解き放たれたその ⾃由の元に」
(怪⼈、⼥たちを⼀瞥し、⼀⼈⼀⼈に語りかけるように)
怪⼈「何も躊躇うことなく 何も恐れることもない
安寧の地は此処にあり 此処より何処へも⾏かずとも
⽣み出されたものたちよ その狭められた⼈⽣
その醜さを思えば この⼼の痛みはかくも」
(怪⼈、恭しく⼀礼しながら)
怪⼈「どうか ⼼安らかにいてほしい ここで そういつまでも」
エレノア 「私たちは今」
ピアンカ「⾃由を得たと」
オフ⼀リア「貴⽅はそういうけれども」
アメリ「あなたこそ私たちの」
サテイ「⾃由を奪っているのではないの?」
ルイ⼀ゼ「さあ、どうなの、答えて!」
六⼈の⼥たち「“怪⼈!”(ファントマ)」
怪⼈「美しさ! その命 駄作と消え去るその前に
救いの⼿差し伸べた ただそれだけのこと」
○(暗転、再び居城⼀⼀怪⼈にのみスボットが当たる、舞台から観客へ向かって)
怪⼈「そう、君たちは 作り出された命の虜囚として」
怪⼈「⽣み出されて 消費される 話り⼿たち その意のまま」
サティ「あなたのその悲しみは」
怪⼈「癒されはしない!」
アメリ「あなたのその憎しみは」
怪⼈「潰えることはないだろう」
怪⼈「何故!」
エレノア「語る⾔葉を持たない」
怪⼈「それは何故?」
ビアンカ「作り出されたがため」
怪⼈「鳴呼、何故?!」
ルイーゼ「語り⼿が望むがため」
怪⼈「それが何故?!」
オフィ⼀リア「命を知らないため」
(怪⼈、⼥達を哀れむように)
怪⼈「そう 役割亡きものに ⾃由を選ぶことはできない
なら 美しき君たちに 台本を与えるのだ!」
エレノア「ああこのまったき暗闇の中に」
サティ「産み落とされた私たちには」
ビアンカ「その役割背負い⽣きるしかないと」
オフィ⼀リァ「貴⽅はそういうのね“怪⼈”(ファントマ)?」
(怪⼈、⼒強く)
怪⼈「ああそうとも!」
怪⼈「美しきその姿 暗闇に惑うその前に
その命輝ける 幸せな詞を!」
(怪⼈、⼥たちに⼿を差し出す)
怪⼈「さあこの⼿をみな取るがいい 美しきものたちよ さあ!!」
(⻑い沈黙)
(ややあって、エレノア、うつむいて告げる)
エレノア「いいえ、あなたは…間違っている」
ビアンカ「⽣まれたもののその⼈⽣は」
オフィ⼀リア「⽣まれたものの物だから」
エレノア/ビアンカ/オフィ⼀リア「誰にも渡せない」
アメリ「たとえ暗闇に歩こうとも」
サティ「途⽅に暮れることになろうとも」
ルイ⼀ゼ「命のあるその限り」
アメリ/サティ/ルイ⼀ゼ 「渡せはしない」
サティ「この命はもしかして、誰かの作り物なのかもしれない」
アメリ「ひいてきに意図的にそうあるべく」
ビアンカ「背負わされた役割を」
ルイ⼀ゼ「それでも今あなたに告げたい」
オフィ⼀リア「⽣まれたものたちは全て その命を燃やしてゆく」
エレノア「役割を終えたとしても…そこで終わらない」
六⼈の⼥たち「そう、私たちの命に 脚本など無くともいい。⽣きていく、その⾃由を、⾃分で選び取る」
六⼈の⼥たち「どうか、泣かないで そして、ありがとう 私たちみんな、⽣んでくれて」