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その音は
少年時代の彼にとっては
日常の全てだった
南国の日差しを避けるかのように
汚れた路地裏に身を潜めながら生きてきた彼は
たい月超える軍用機の音る中で
数多くの悪事
その小さな手を染め続けていた
彼は生まれてからいつも孤独だった
別にそれを不思議だとも思わなかったし
これから先も
永遠に孤独の不調は歩いていく
ものだと信じて疑わなかった
だからその目は
全ての人間に疑いの炎を向け
どこまでも獰猛に光っていたのだった
だがその日
少年はタバコの煙と喧騒の渦巻く酒場で
一人の男と出会ってしまった
男は小柄な日本人であるにもかかわらず
叫ばにあふれるアメリカ兵達の中に混じっでも
誰よりも大きな存在感を持って
少年の前に現れたのだ
反町と名乗ったその男に
少年は一目で魅せられてしまった
反町の鋼のような肉体から迸る
美しいまでのさっきから目が離せなかった
こんな男に 自分もなりたい
それは生まれて初めて抱く感情であり
そしてこのことが少年を
修羅の道に引きずり込んでいくことになるんだった
そう、もしかしたら
彼はこの時
反町と出会うべきではなかったのかもしれない
そうすれば
この後に起こる
数々の運命の流転に翻弄されることもなく
孤独ではあるが
居心地の良い路地に潜んだまま
その生涯を終わることができたかもしれないからだ
少年が反町と共に
旅立つことを決心した日
聞こえていたのはやはり
全てを覆い尽くすように響く
軍用机の音だった