その白椿の香気のいいこと、目も眩むようでした。
思わずむせ返って、
「ハックシン」と大きなくしゃみを一つして、
ふっと目を開いてみると、
どうでしょう。
自分はいつの間にか白い寒椿の花になっていて、
目の前には千恵子さんそっくりの女の子が立ちながら自分を見上げております。
千恵子さんはびっくりしましたが、
どうすることも出来ませんでした。
ただ呆れてしまって、
そのこの様子を見ておりますと、
その女の子は自分を見ながら、
「まあ、何という美しい花でしょう。
そしてほんとにいいにおいだこと。
これを一輪ざしに挿して勉強したいな。
お母様に聞いて来ましょう」
といいながらバタバタと掛けて行きました。
しばらくすると、
千恵子さんのお母さんが花鋏を持ってお庭に降りておいでになりました。