今なら言える
君にすまなかったと
彼が越してくることを知ったのは、高二と高三の間の春休みだった
佐野:引き取る?
父:あ~、仕方ないんだ。
お前の部屋においてやってくれないか?
高校に上がったばかりの、つまりぼくと同年代の遠縁の男の子が、父は引き取るという
佐野:俺、受験だよ!!
父:わかってるよ!私たちだってできれば預かりたくない、
母:私は反対したのよ!
父:よしなさい~
母:うちはわざわざ預かることないですよ、そんな厄介な子
今は立派な季節だってあるんですから
佐野:そんな不良なの?
父:いや、そういうじゃないんだ、なんていうか...
母:変わってるのよ、
その時の僕はちょっとナーバスになっていた
受験はもちろんだけど、恋愛とか、人間カンケイとか、色々のことが上手くいってなかったのだ
だから、親戚の子が来ると聞いて、正直迷惑に感じた
一人になりたいところへ、急に他人が土足で踏み込んで来るような、そんなうっとしさを感じていた。
夏目:初めまして、夏目貴志です。
佐野:佐野由人です、よろしく、
夏目:ごめんなさい、せっかくの部屋を二人で使うことになちゃって、
佐野:いいよ~気にしないで、そういう時もあるよ、
夏目:ありがとうございます..
父:堅苦しくしないで...
母:由人は受験だから、そこだけ気を使ってくれれば問題ないですからね!
夏目:はい、
父:君も年が近いからわかるだろうけど、コイツも色々あってね!
佐野:やめてよ、そういう言い方、
母:お友達を連れ込んだり、騒いだり、そういうことがなければいいのよ、分かっていただける?
夏目:はい、
彼との生活は平穏だった、
彼はおとなしく、礼儀正しい少年だった。
僕も彼にとって、決して迷惑な存在ではなかったと思う、
冷たくもしなかったし、嫌がらせなんって勿論しなかった、
僕は彼の生活に立ち入らず、彼も僕の生活に立ち入って来なかった、
そう、僕たちはそれなりに上手くやっていた、
僕の両親の態度を除いては
母:お茶を入れましたよ、
佐野:ありがとう
夏目:ありがとうございます、
母:どう、勉強は、
佐野:まぁ~それなりに、
母:そう~
貴志君、邪魔しないであげてね、
由人は大事な時なんだから。
夏目:はい
佐野:ごめんね~
あんな言い方って、
夏目:いいんです、気にしないでください。
彼は微笑みさえ浮かべていた、
多分、傷つくことに慣れてしまっているんだろうと思った、
一体彼は今までどんなふうに暮らしてきたんだろう、
どんなふうにまわりと係わってきたんだろう
佐野:あ~ごめん!
もしもし、
あ~久しぶりですね!
え~明日こっちに出てくるんですか、
はい、大丈夫ですよ、
それなら、この前行った喫茶店で
従姉妹:由人くん~~~
電話は年上の従姉妹からだった
近くに遊びに来るついでに、僕の顔見たいという。
従姉妹:どう、あの男の子、
佐野:どうって、何か、
従姉妹:へ~由人くん、あの子のこと何も知らないの、
佐野:だから、何のこと、
従姉妹:そうか...
叔父さんも叔母さんも黙ってたんのね!
君に心配掛けたくないんだよ、
佐野:教えてよ、どういうことなの?
従姉妹:霊感が強いだって、
佐野:えぅ>。。
従姉妹:見えちゃうらしいの、変なものが
でも、うちの親は嘘だろうって言ってだけど
かまって欲しくてそういうこと言うんだろうって、
佐野:お...
従姉妹:いい加減行くとこなくなちゃって
それで、おじさんも叔母さんもことわりきれなかったんじゃない
ゆうとくんだたでさえ受験なのに、お荷物を背負い込むみたいなこと、本当は嫌だったんだと思うよ、
佐野:お...
従姉妹にはそう言われたもののの、僕は信じなかった、オカルトとかそういうものまるで興味なかったし
少なくとも、僕の前では、彼は変わらず普通だったからだ、
ある日、学校帰りの電車の中で、彼を見た
ガラガラの車輌に彼は乗っていた
電車で一時間ほどの公立高に通っていた
僕の学校とは途中まで路線が同じだった
僕は隣の車輌からそれを見ていた
彼はこちらに気ついていなかった
いや
気づく余裕はなかっただろう
彼はとても異様だった
何もない空間に手を伸ばし
何かにいとしむように声をかけていたのだ
いつものあの、心優しい笑顔を浮かべて
他の乗客たちは気に止めていないようだった
あるいはみんな無関心を様相っていただけかもしれない
僕は従姉妹の話を反芻していた
あの噂は本当なのか
何かが見えるなのか、それども、気を聞くための嘘なのか
だが
知り合いの誰も見ていない場所で
一体誰の気を引こうというのだろう
その日から
僕は彼が気になって仕方なくなった
彼の眼差し、その先にあるもの、何気ない彼のしむさ
彼のいる時ばかりじゃない
そこ畏る闇、微かな風のそよみ
どこからか聞こえてくるささやかな物音
そう
僕は彼を通じて
今まで気にも止めなかった、目に見えない世界を意識するようになってしまたのだ。
父:先生からこのままじゃ志望校は無理だといわれだよ
母:どうしちゃったの、ボットしちゃって、
佐野:えん~
父:あの子と何かあったんのか?
佐野:別に何もないよ
母:ガンマンしなてもいいのよ、言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい
佐野:何もないだら、
ある訳がない、言えるわけがないし
それに、きっかけは彼でも、気にしているのは僕のほうだ
夏目:何かあったんですか。
佐野:なんでもない、気にしないで、
夏目:そうですか。
彼は机に向かい一人本を読み始めた
何を考えているんだ
君は本当に嘘つきなのか
それども
本当に何かが見えるのか
どうなんだ
聞いてみたかったが
そこまで踏み込んでいけないような気がした
年の割に大人が彼の立たずまいに
彼の人生の過酷さを感じていた
僕なりに彼のこと調べて見た
多方は従姉妹の言った事と変わらなかった
ある親は気味が悪いといえ
別の親戚はホラ吹きだと笑った
小学生の彼を引き取った親戚はこう語った。
親戚:預かったその日に、ちょっとあってなぁ~..
夏目:すごい~~ここってなに?
親戚:納屋だよ、まぁ~物置だなぁ~
夏目:あ~..すごい、すごいよ...
親戚:へぇぇ..お前、納屋がそんなに珍しいの?
夏目:そうじゃないよ、あれだよ。
親戚:あれ?あれって何の事だ?
夏目:すごい~~~
親戚:ああ?(@_@;)
しゃがんで何もないとこじっと見ながら、ずっとすごいすごいって言ってるんだ
そのうちに、なんだかこっちは気味悪くなってきたなぁ
あの子の評判も聞いてたし。
親戚:すごいってなにがすごいだ?
夏目:何かってこれだよ、これ、
僕はこんなすごいのは初めてだよ。
親戚:ああ?(つд⊂)
夏目:すごいなぁ~
親戚:よせよ>。。
夏目:だってこんな...
親戚:何もねぇぞ、そこには。
夏目:え?叔父さんこれ見えないの?
親戚:でもある晩、俺一人で納屋に行ったら、がっさと音がしてなぁ
近寄って見たら、変なベトベトしたもんが小ぶりついてって
あんなもんは初めて見た
気持ち悪くて
それからしばらくして納屋を焼いちまった
佐野:それって本当なんですか?
親戚:ホントだ
本当だけど
そんなことわからねぇし、分かりたくもねぇよ、
佐野:はぁ~
後一つ
彼には玲子という祖母がいて
やはり親戚から気味悪がられていたという話も聞いた
だが、その人もまだ聞きで、それ以上詳しい事は分からなかった。
そして数日が過ぎた
僕が寝とこで微睡んでいると、不意に囁くような声が聞こえてきた。
夏目:ダメだ、そんなところに乗ったら、
佐野:え?
彼は僕が熟睡していると思ったんだろう。
夏目:おいて、こっちにおいて
さ、いい子だから
何も怖くないから、
来るんだ
そう、そうだよ、よし。
恐れ恐れ目を開けると
それには僕の頭の上の何かに語りかけている彼の顔が...
夏目:降りておいて、その人は疲れて寝てるんだ。
佐野:わあああああああ( ╬◣ 益◢)y━・~
母:なんなの一体?
父:君、由人に何をしたんだ。
夏目:いや、俺は....
佐野:貴志君は何もしてないよ。
母:だって おあなた...
佐野:俺の気のせいだったら。
母:どうなのあなた、本当に何もしてないの?
父:別に責めよって言ってるんじゃないよ、一緒に暮らしているん...
あの時の彼の目
僕には見えないもの確実捉えた目
なのに、いつもと変わらぬ、優しい眼差し
僕は自分が彼に捕われていた理由を自覚した、
とりかく、俺が悪かっただから、
だた、彼のことが怖かったのだ。
夏目:ごめん、ごめんなさい。
僕は布団に潜り込んだ、なんとなく、自分の今の顔を彼に見られたくなかった
それから数日、彼とは挨拶しか交わさなかった
何をいっても取り繕うやごまかしかならないような気がした
彼は何も変わらなかったけれど
僕は
いや、僕たちの間はぎごちなくなていた
そしてその日、僕は彼を散歩に誘った
内心彼にはっきり訪ねてみようと決めていた
彼の口から真実を聞きたかったのだ。
佐野:あのさ
前から聞こうと思ってたんだけど
夏目:あ..
佐野:どうした
夏目:足音...
佐野:おい>。
僕は後を追った
彼は急いでいた
彼の向かう先には母親と三歳ぐらいの男の子がいた、
佐野:待ってよ、何するんだよ、
女:あ...ちょっと、なんなのあなた、あ...やめて>。
彼は子供を奪うように持ち合う、そして
突然何もない空間に向かって叫んだ。
夏目:これは、お前が探しているものじゃない、
佐野:いい加減にしろ、
夏目:あ..
気づくと
僕が彼を付き飛ばして、男の子を奪え返していた。
周りの人:なになに、なにがあったんだ?
周囲には人だかりができていた
異様なものを見る人々の視線、視線、視線
僕はどんな顔で彼を見下ろしたのだろうか
彼は一瞬僕の目を向けると、すぐにうなだれた
表情は分からなかった、
騒ぎを聞き付けて警官は僕たちを警察署に連れて行った
説明に困った
適度なことを言って誤魔化した僕たちは
廊下の片隅で親のむかいを待たされた。
佐野:何が見えたんだ。
夏目:え?
佐野:普通の人には見えない何かが見えてるんじゃないのか?
佐野:聞いたん、君の噂
多分あまり君に愉快じゃないことばかりだと思う
でも俺、気になって仕方がないんだ
君が、君が見てるかもしれないものか
本当なのか、本当に見えてるのか。
夏目:もし、本当だったら、どうするんですか?
佐野:え?
夏目:本当だったら、それはあなたのためになるんですか?
佐野:あ..あ...
夏目:迷惑ですよね...
佐野:あ..えん..迷惑っていうか、困ってる。
集中できないんだ、勉強とか、あ..色々..
夏目:ごめんなさい。
佐野:あ..あ...えん.
あんなこと言うべきじゃなかったかもしれない、
その後、向かいに来た母は
息子は悪くない、悪いのはこの夏目貴志というこのほうだ
親戚の間でも迷惑がられている、曰くつきの子なのだと、僕と彼の目の前で 警官に捲し立てた
僕は彼の顔を見られなかった
ただ自分が自分の母親が恥ずかしかった。
それからほどなくして
彼がうちを出ると聞かされた
遠い親戚の元に預けられるという
彼の引越しも転校も全てが決まったうえで僕は結論だけ聞かされた
最後の日は、呆気なくやって来た。
夏目:あの日はすみませんでした
佐野:えん。
夏目:でも、あれはああするしかなかったんです。
佐野:えん。
夏目:じゃ、さよなら。
佐野:さよなら
彼はあの心優しい笑顔を僕を向けて去って行った。
彼がいなくなった部屋で思った
君のこと嫌いじゃなかった
いや、多分好きだ
もっと上手くやれただろう
君を引き取って藤原さんは夫婦揃っていい人たちだよ
あの街はきっと君も気に入るだろう、それに、それに
えん、やめた
こんなこと考えてなんになる
僕は、僕の家族は彼の人生をまた少しだけ不幸にしたのだ。
今なら言える、君にすまなかったと
もはや僕も彼を追いやった親戚の一人だった。
後日、僕は彼が子供を抱き上げた商店街を通りかかた。
あれはなんだったのか、錯覚なのか、あるいは別の何かなのか
いまだによく分からない。
佐野:え?
ビルの三階ほどの背だけのある人影が子供に手を伸ばしていた。
佐野:あ...あ...
気づくと
商店街はいつもの光景だった、
子供は無事で、道行く人達が変な顔で僕を見ていた。
僕はあの日の彼のことを思った。
君は一人誰にどう思われるのも構わず
ただ子供を助けるためにあんなことしたのかい?
きっと今までもそうだったんじゃないのか?
そして、多分これからも、
だとしたら
君は、君の世界はなんて孤独なんだろう..
僕は一人彼の幸せをそっと願った。
cast:
夏目貴志:神谷浩史
佐野由人:樱井孝宏
资料:-kirino
翻译:-kirino
校对:-kirino
制作:-kirino